賛否両論メンヘラ漫画家、永田カビさんのこと
さて、著書が賛否両論のネット漫画家、永田さんについて。
まずは漫画家永田カビさん自身について。
私、この人については
「カビさんにはなんとか生き残ってほしいな。たぶん実際会っても仲良くなれないとは思うんだけど」
という複雑な感情を持っている。作品は面白いけど本人は面倒くさい。あまり友達にはなれなさそう。でも放っとけない。
雨宮まみさんに感じていた気持ちと似ている。
たまたまこの人をフルボッコにしている記事を見かけてしまったが、
その記事を書いた人はうつや発達障害とは無縁の方の様だった。
多分カビさんの作品はまともに生きて来られた人には響かない作品なのだ。
まともに生きて来られた人は、「まともに生きることすら出来ない人間がいる」という暗がりを知らないのである。
これまで生きて来て、何人かの「まともに生きられた人たち」を見たことがあるけれど、全くもっていっそ羨ましくなるほど「陰がない」のである。
私は月に一度は「死にたい」と思うが、「まともに生きられた人たち」はそこまで絶望した事はそんなにないのだ。もしかしたら一度もないのかも。
「死にたい」は「まともに生きられた人たち」にとっては遠い。
仮に「死にたい」と「まともに生きられた人たち」に告げたのなら「どうして!?」と言われてひどく深刻に受け止められるのだろう。
陰がない人って本当に羨ましい。私もそちら側に行きたかったなあ。
カビさんは作品中で親を殊更に責めているという事でも批判を呼んでいる。
カビさんの親御さんは別に毒親ではないと思う。
ただ、ネグレクトしなければ、虐待しなければ、子供がまともに育つのか、と言ったら答えは必ずしもイエスではない。
傍から見たら何の問題もない両親に育てられても、うつ病になることはある。
私もその例である。
(まあ、祖父母も父母もいつも口喧嘩ばかりしていた、というのは問題と言えば問題か。この話はまたいずれ機会があれば)
カビさんのご両親はやや不仲気味で、自分達が生きて行くのに精一杯で、別にカビさんを軽んじたつもりはなかったと思う。
ただ、親御さんとカビさんは相性が悪かったのだ。カビさんや私の様に認知の歪んだ人間には、言葉にしてくれないと分からないのだ。
人の気持ちが分からない、というのは「努力が足りない」訳ではない。
本当に理解が及ばないのだ。どう説明したら良いか分からないが…頑張って人の立場に立って考えようとするのだが、分からない。
懇切丁寧に説明してくれれば、分かる…時もあるが。
この辺は私も同じものを持っていて、カビさんにも恐らく発達障害のケがあると思う。
今はそれなりに印税で儲かっているんだろうから、カウンセリングに行って欲しい。
けどこの人は多分、自分に正面から向き合う事は出来ないだろうなあ。
逃げグセがついてしまっている。ただ、それは必ずしも本人のせいだけでなく、病気のせいでもあるんだけど。
作品が好きだから甘やかしている訳ではない。うつ病とはそういうものだ、というだけの話。
永田カビさんのコミックエッセイ本感想
レズ、とタイトルに入っているが、本作はレズビアンを描いたものではないし、ましてやレズ風イ谷(Googleへの配慮…)のレポでもない。
カビさんは恐らくレズビアンではないと思う。
基本的に人間が怖い人だが、男性に比べたら女性なら比較的怖くない、というだけ。
ではレズビアンの話でないのなら、何が主題か?と言うと、メンヘラが自分の殻を破ろう、とする話。
しかし、進捗具合は新生児が立てる様になった、くらいのもの。
基本的にはのたうち回って前に進んだ様な気がするけど、一歩も進めていない。
人間関係をちゃんと築いて来た人から見れば、理解不能の本だと思う。
レズ風イ谷のエ□エ□体験、という内容ではないので、その辺りで興奮したい人は他の本を見た方が良い。
ただ、メンヘラには響くところがあると思う。
カビさんがこう考えた、こうだと思ってたけど違った!と言ってる事は大体メンヘラあるあるだ。
メンヘラを理解したい人は読むと少し分かるかも。
大変そうだな、という事だけでも、分かって貰えればメンヘラ当事者にとっては嬉しい。
パッと見エ□がテーマの様で目を引くタイトルの付け方が秀逸であるが、まあ、何度も続く手ではないだろう。
二作めである。
個人的に交換日記には嫌な思い出がある。
中学生の時に、小学生の頃から親友だと思っていた人たちに、4人でやっていた交換日記からいつの間にかハブられていた事がある。
この事、人に向けて言った(書いた)のは初めてだけど自分のことながらきっついなこれ。こんな目に遭ったらそりゃあ心も病むよ。
そんな私より更に上を行くのがこの「一人交換日記」だ。
なんと、カビさんは一人で交換日記をしていた。
一人で交換日記なんてしようと思った事がない。(このブログは結構そんなかんじではあるけれど一応人に見せる気満々で書いている。)
もう発想がぶっ飛んでいる。
今回は親御さんとの確執がメイン。
前述したがカビさんの親御さんは毒親ではない。
けれどカビさんにとっては耳に痛い事ばかり言う人達だった。
それは毒親とかではなく確執、というのがいいかな。
この記事の最初の方で書いた事と繰り返しになるが、相性が悪い、という言い方が正しいのかもしれない。
子供は親を選べないのだから、運悪く、相性の悪い親のところに生まれてしまうこともあるだろう。
カビさんはそのケース。たまたま繊細な人で、認知が少し歪んでいる。だから、親御さんは傷つけたつもりはない言葉でも傷付いてしまうのだ。
でも、本質的にこの人はお母さんが好きなんだろうなあ、と思う。
「さびしすぎて~」を読んでからの方が分かり易いとは思うけれど、単独でも読める、かな。
永田カビさんの秀逸なところ
この人は漫画を読めば分かるが、心の内を絵にしたり、言語化したりする事がとても得意だ。
あと、絵はとても上手いと思う。(精神状態によってはせっかくの画力が荒れてしまう様ではあるが…)
考えてる事に一貫性がないのはメンヘラだからだ。
その一貫性のなさに、この間思ってた事と違うじゃない!!っていう感想を持つ人もいると思う。
でも、メンヘラとはそういうものなのだ…。
落ち着いてる時は落ち着いてるが、落ち着けない時の方が多い。
そして落ち着いてない時はこの世の終わりみたいな気分になっているんですよ。はい。
この本を読むと、傍から見ると私はこんなかんじなのか…とちょっと怖くなるが、まあ仕方ない。それが病気だ。
私は、永田カビさんは世間知らずだと思う。
それは病気のせいで中々外に出られなかったからだ。
もっと外に出て、他人や自分、そして病気と向き合って治して行った法が良い。
ただ、この人は何故治したらいいか、分かってなさそうなんだよなあ。
治す必然性を感じないと治そうとは思わないので、まずは治そう、と思うところからかな。
彼女に嫌だな、と感じる部分は自分の嫌なところにぐさぐさと刺さるので、結局近親憎悪なのかなあ。
ネットでは賛否両論だし、恐らく、「まとも」な大多数の人には刺さらない作品だと思うけれど、次作も私は読んでしまうだろう。
彼女のことを崇拝も賞賛もしないが、きっとこれからも彼女の作品 からは目が離せない。
万人向けとは言い難いが、メンヘラを理解したい人は一読しても良いかも。
ただメンヘラ当事者は引っ張られるので元気な時に読んだ方が良いです。(大事なことなので強調しておきました。)
乗り越えてから描いた漫画は数あれど、メンタルががたがたな最中に自分の事を描いた漫画はあまりない様に思うので、その意味では非常に価値のある漫画だと思う。
もしご本人がここに辿り着いたのなら、という事で書いておく。
カビさんへ
酷評を見てしまって精神がやられてるようなので、あまりネットの感想を真正面から受け取らない方が良いです。
あなたの作品は好きです。
生き抜く方が、死ぬよりも何倍も辛いけど、生きて幸せを掴んで下さい。
ではまた。